G20の大半の国・地域では成長率が、今後5年間で鈍化し、パンデミック前の20年間に見られた水準を大幅に下回り続ける見込みだ。
これは、世界の国内総生産の約85%を占めるG20にとって、共通する最大の課題のひとつである。昨年G20に加盟したアフリカ連合は、成長が堅調だが、人口が急増しており、労働市場に参入する何百万人もの若者の雇用を創出しなければならない。
両グループにとって、また欧州連合(EU)にとっても、成長を押し上げることが、人々の繫栄を促すために不可欠であり、これには共通の解決策がある。われわれがG20に対する新たな報告書で概説する通り、優先的な改革を実施することで、今後5年間の(または中期的な)成長見通しを大幅に押し上げることができる。また、われわれの分析では、構造改革が慎重に順序立てられ、社会的コンセンサスを反映している場合に、こうした改革の見返りが最大になることが示されている。
今直面するさまざまな課題は、成長を促進する改革に投資する時が来たことを示す。2024年4月の「世界経済見通し」第3章 で詳述されている通り、一部の国においてマイナスの人口動態によって助長されている生産性の伸びの鈍化が、潜在成長率を抑制している。多額の公的債務、地経学的な分断、保護主義の台頭によっても持続可能な成長が危険にさらされている。
「今週のグラフ」が示すように、これらのグループの国々における最大の優先事項は、政府予算の持続的な健全化を支えるべく、財政政策枠組みを改革することである。
具体的には、G20の大半の先進国といくつかのEU諸国は、公共支出の上限を強化することが有効であろう。G20の新興市場国と発展途上国の大半は、歳入を増やすための改革を優先すべきである。アフリカ連合のいくつかの国は、財政の透明性の向上が有効であろう。
多くのG20諸国とアフリカ連合諸国における、優先度の高い構造改革は、他にふたつの重要な分野がある。まず、スキルと雇用機会を一致させるために、スキルのトレーニングと教育の質を改善する必要がある。第2に、再生可能エネルギーの能力向上や、炭素税の有効性の向上、化石燃料補助金の段階的廃止など、エネルギー移行を加速させるための改革が不可欠である。アフリカ連合のいくつかの国・地域では、法の支配を強化し、汚職を排除し、公共財政管理を改善するために、ガバナンス改革が緊急に必要とされている。